駅までバスで15分。そこから電車で20分。
週3回、私はスーパーでパートのレジ打ちをしています。
これまでは、当たり前のようにそのルートで通勤してきました。
でも、昨年の秋にバスの本数が減ったんです。
コロナの影響、乗客減少、運転手不足――ニュースではそう説明されていました。
「1時間に1本」の現実がやってきたのです。
「乗れなかったら、遅刻する」
「帰りは40分近くバスを待つ日もある」
たったそれだけのことなのに、生活は急に不安定になっていきました。
「車が運転できたら、どんなに楽だろう」
そう思って、何度も自分に問いかけました。
でも答えはいつも、「私には無理」でした。
免許を取ったのは30年以上前。
20代のころ、数回だけ運転しましたが、車線変更で怖い思いをしたことがあり、それきりずっとハンドルを握っていません。
もうすぐ還暦になる私が、今さら運転なんて…。
そう思いながらも、通勤の不便さは日に日に積もっていきました。
ある日、仕事帰りのバス停で、隣にいたご年配の女性がふとつぶやいたんです。
「こんなに待たなきゃいけないなら、運転、また練習しようかしら」
その言葉に背中を押されたような気がしました。
帰宅後すぐにスマホで検索して、「女性専用」「軽自動車」「自分のペースで」という文字に惹かれて、パンダドライビングレッスンにたどりつきました。
和泉中央プランなら、家から電車一本。まずは体験してみようと思いました。
駅での待ち合わせ。
教習車はコンパクトな軽自動車。
「こんな小さな教習車もあるんだ…」とまず驚きました。
車に対する“重くて怖いもの”というイメージが、少しやわらぎました。
先生は女性で、やさしい語り口。
「今日は何年ぶりの運転ですか?」と聞かれ、「30年以上です」と答えると、
「そうなんですね。それでも、来てくださったのがすごいです」と言ってくださって、少し肩の力が抜けました。
最初はブレーキの感覚すら忘れていました。
アクセルを踏むのも恐る恐るでしたが、先生が「まずは転がす程度でいいんですよ」と言ってくださり、ゆっくり動かす練習から始めました。
驚いたのは、「視線の置き方」でこんなにも操作が変わること。
私はずっと、道路の白線ばかりを見ていました。
それが不安の原因だったと教えてもらい、「もう少し先を見ましょう」と指導されて実践してみると、車がスッと自然に動き出したんです。
ハンドルも、力を入れずに回せることを知って、「なんで今までこんなに怖がってたんだろう」と思いました。
でも同時に、知らないことが怖さを生んでいたんだ、とも感じました。
レッスンが終わるころには、発進と停止を自分の判断でできるようになっていました。
先生が「今日だけでこれだけ動けたのは大きいですよ」と言ってくださって、本当にうれしかったです。
家に帰って、冷静に計算しました。
「週3日、往復2時間ずつの無駄。月に24時間。年間で…」
そう思うと、運転できるかどうかが、これからの“人生の効率”にも関わってくる気がしてきました。
運転が特別なものではなく、「生活を自分で守るための道具」として必要になった今、
自分の意思で再びハンドルを握る決意ができたことが、何より大きな一歩です。
パンダドライビングレッスンは、そんな私に“現実的な力”をくれました。
(50代後半・パート勤務/和泉中央プラン)